2011年12月08日
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三百字小説『瀬加羅歯科』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 瀬加羅歯科の院長はかつてスケバンだったが、今は人気女歯科医であった。

 ある日、それと知らずにかつての敵チームの元女ボスが現れた。元女ボスは院長の顔を見てびっくり。

 「昔の復讐なんてごめんよ」

 「もう昔のことです。やんちゃだった頃のことは水に流しましょう」

 「その言葉、信じていいのか?」

 「なら、無料でスペシャル治療コースを提供しますわ」

 元女ボスは毎日歯科医に通い、全ての歯が完璧に治療された。どこにも問題など無かった。ただ、歯医者嫌いの元女ボスにとって、毎日の通院は死ぬほど苦痛だったことを除いて。

 院長は治療が全て終わった後でニヤリと笑った。

(遠野秋彦・作 ©2011 TOHNO, Akihiko)

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